711系

 711系は北海道向けに1M方式を採用して開発された交流近郊形電車です。近郊形ながらキハ22同様のステップ付きデッキ式,クロスシート車で,両端2扉タイプとされ,耐寒耐雪のため各部所の保温対策が施されています。貫通形パノラミックウィンドウ前面にはシールドビーム2灯と強固なスカートを装備しており,外観は交流を示す赤色で,前面は警戒色のクリームが塗られています。主電動機の通風の雪対策として,M車の客室端に雪切り室を設け,車側の通風口から導入した空気中の雪を遠心分離と加熱で分離除去し,ダクトで主電動機に送風する機構を初めて採用しています。主電動機は出力120kWのMT54で,逆接続したサイリスタとシリコン整流器で制御し,4並列の主電動機を駆動する方式です。抵抗器を搭載できないため空気ブレーキのみとなりました。また,上まくら空気ばね式台車を使用しており,軸箱支持装置は円筒しゅう動式,コイルばねにはゴムで覆われたエリゴばねが使われています。

試作車 1967年に先行試作されました。McTcでS901編成とS902編成があります。
 901編成:サッシュ付き二段1重窓で,戸袋部は側扉をt枚折戸としています。のちに戸袋付きの引戸に改造されました。台車はDX38X・TR208Yで両だき方式ブレーキを採用しています。
 902編成:サッシュのない小形の一段二重窓で,当初クモハのみ床下全体が防雪スカートで覆われていました。クハ屋上に大形通風装置を搭載しています。台車はDT38X,TR208Xで,前者には密封コロ軸受,後者にディスクブレーキを採用しています。

第1次量産車 1968年に登場した量産車。1M2T構成となり,TcMTc編成となりました。密封コロ軸受が本採用となりました。主回路はサイリスタとシリコン整流器を各2群づつで混合ブリッジを構成しています。8本が製造されました。また試作901編成に組み込むモハ711-9も新製されています。

第2次量産車 1969年増備の10編成では主変圧器の2次回路を4群に分割して混合ブリッジで接続する一方,主電動機を2基づつ直列接続した主回路に変更し,モハのみ50番台に移行しています。

第3次量産車 1980年,室蘭電化用に増備されたもので,これまで両向きであったクハを奇数向き100番台,偶数向き200番台として固定し,モハも100番台となりました。クハの頭上に2連の前灯が追加され,既存車も同様の改造を受けています。

■ 新製車
形式 番号 製造年 主な仕様相違点
クモハ711 901 1967 奇数向き(小樽方),1M方式,試作車,耐雪形パンタグラフPS16G,台車DT38X,連結面3-4位側に大形雪切室設置,MG,CP設置,定員84名,座席72名,トイレ・洗面所未設置,901はS-901編成,客用扉は4枚折戸両開き式,客室窓は16mm厚複層ガラス1重,下段固定・上段下降ユニット窓
902 1967 試作車,S-902編成,客用扉は一般的な片開き式引戸,客室窓はキハ56系と同様開閉可能な1段上昇式二重窓
モハ711 1-9 1968 第1次量産車,定員96名,座席78名,トイレ・洗面所未設置,搭載機器はクモハ711と同様,雪切室を2-3位側に変更,主変圧器TM13A,パンタグラフは下枠交差式のPS102Bに変更
51-60 1969 第2次量産車,誘導障害対策施工で50番台に移行,変圧器は2次巻線を4分割にしたTM13B,主制御器CS38
101-117 1980 第3次量産車,車体難燃化,客用扉ステンレス製に変更,側面方向幕設置,電気機器類の脱PCB化,主変圧器TM13D,主整流器RS39B,主制御器はサイリスタ搭載のCS48に変更
クハ711 901 1967 試作車,偶数向き(旭川・室蘭方),定員84名,座席72名,S-901編成,台車はディスクブレーキのTR208X,扉・窓はクモハ711-901と同様
902 1967 試作車,S-902編成,台車は制輪子による踏面ブレーキ装備のTR208Y,扉・窓はクモハ711-902と同様
1-16 1968 第1次量産車,クモハが無くなり両渡り構造に変更,両方向に使用,トイレ・洗面所設置,屋根上通風器を押込式に,洗面所窓形状変更
17-36 1969 循環式汚物処理装置搭載準備工事施工
101-120 1980 第3次量産車,片渡り構造,奇数向き(小樽方),トイレ・洗面所省略,定員96名(座席70名)
201-218 1980 第3次量産車,片渡り構造,偶数向き(旭川・室蘭方),トイレ・洗面所付,循環式汚物処理装置搭載

クハ711 901
No.16-22
1983年8月18日 8:30
札サウ S901編成他
クハ711-901他 6両
室蘭本線 登別
小樽/奇 クハ711+モハ711+クハ711+クハ711-119+クモハ711-901+クハ711-901 室蘭

試作車のクハ711-901他の6連。サッシュの側窓は153系,165系,475系などを思わせます。
(2023/07/26ワイド化)
クハ711 17-36
No.148-7
1987年7月31日
札サウ S57編成
クハ711-29他 3両
室蘭本線 苫小牧
小樽/奇 クハ711-29+モハ711-57+クハ711-30 室蘭

くるくる電車ポプラ号の貴重な写真。1987年7〜8月の北海道の旅の1コマ。ようやく日時と場所特定できました。
(2010/01/31追記 2023/07/26ワイド化)
クハ711 101-120
No.241-32
1991年9月17日
札サウ S106編成
クハ711-106他 3両
室蘭本線 白老→社台
小樽/奇 クハ711-106+モハ711-106+クハ711-206 室蘭

札幌都市圏で増加する乗降客への対策として1987年からクハ711を3扉にする改造が施工されています。
(2009/04/04追加 2023/07/26ワイド化)
No.242-3
1991年9月17日
札サウ S113編成
クハ711-113他 3両
室蘭本線 白老→社台
小樽/奇 クハ711-113+モハ711-113+ クハ711-213 室蘭

S113編成。この編成は3扉改造されていません。
(2009/04/04追加 2023/07/26ワイド化)
クハ711 201-218
No.16-21
1983年8月18日 6:23
札サウ S104編成
クハ711-204他 6両
函館本線 札幌
小樽/奇 クハ711+モハ711+クハ711+クハ711-104+モハ711-104+クハ711-204 旭川・室蘭

S104編成,クハ711-204他の3連+3連。フィルムはKR。
(2023/07/26ワイド化)
No.D200_090320-44
2009年3月20日 6:38
札サウ S102編成他
クハ711-202他 6両
121M
函館本線 札幌
小樽/奇 クハ711+モハ711+クハ711+クハ711-101+モハ711-102+クハ711-202 旭川・室蘭


S102編成(クハ711-202)他の3+3連。小樽5:38発,札幌6:26着(7番線)の普通列車です。編成は異なりますが,すぐ上の写真No.16-21とほぼ同じ場所,時刻です。比較すると,JR化,高架化,塗色変更,冷改,パンタ換装などなど大きく変化しており,一方撮影者側の機材も銀塩カメラにマニュアルレンズ,ポジフィルムから,デジタル,AF,VR手振れ防止レンズと様変わりしています。撮影データは,ISO200,f5.6,1/5秒(手持)。四半世紀の時間が変えていったさまざまな事象を実感しながら今回ページをアップしました。
(2023/07/26ワイド化)
No.D200_090320-34
2009年3月20日
札サウ S102編成他
クハ711-202他 6両
121M
函館本線 札幌
小樽/奇 クハ711+モハ711+クハ711+クハ711-101+モハ711-102+クハ711-202 旭川・室蘭

札幌駅に到着する小樽からの121M列車
(2023/07/29追加)
No.D200_090320-38
2009年3月20日
札サウ S102編成他
クハ711-202他 6両
121M
函館本線 札幌
小樽/奇 クハ711+モハ711+クハ711+クハ711-101+モハ711-102+クハ711-202 旭川・室蘭

快速エアポートとして活躍する721系F510編成との2ショット
(2023/07/29追加)

 2009年3月22日 ページ新設
 2009年4月4日 写真追加
 2011年12月4日 キャプション追加
 2023年7月26日 写真ワイド化完了
 2023年7月26日 キャプション欄左右入替完了
 2023年7月29日 新製車一覧表を追加
 2023年7月29日 イベント毎昇順から形式番台毎時系列に並べ替え
 2023年7月29日 新製車一覧表から写真へのリンク設置


■参考文献
 特集:交流電化開業40年 −20000V専用車両のあゆみ− Vol.37,No.432 鉄道ファン 1997年4月 交友社
 JR電車編成表 '92年冬号 ジェー・アール・アール
 Wikipedia 国鉄711系電車


Kano鉄道局TOP 蒸気機関車 電気機関車 ディーゼル機関車 客車 電車 気動車 新幹線