ED91

 日本の交流電化は1955年8月,試験線区に指定された仙山線仙台-作並間のうち,陸前落合-熊ヶ根間16.0kmが単相20kV/50Hzで交流電化されたことにより始まっています。試験用の交流機関車として,直接式交流電気機関車1両と,整流器式交流電気機関車1両の計2両を試作することになり,直接式のED44 1が日立製作所水戸工場にて製作され,1955年7月20日に国産交流電気機関車の第1号として出場しています。一方の整流器式交流電気機関車として試作されたのがED45 1で,三菱電機・新三菱重工により製作され,1955年9月28日,新三重の三原製作所で誕生しました。これらの機関車はメーカ側から国鉄が借用する形態が採られ,国鉄側の落成年月日は両機とも仙山線作並電化前の1957年3月27日となっています。この日を境にようやく作並機関区に正式配置されたことになります。これに先立つ両機の試験の結果,交流電機の電気方式は整流器式が種々の点で有利と判断され,以降の試作改良は整流器式で進められることになり,新機軸を盛り込んだ整流器式機関車として2両が試作されています。この1両が,ED45 11で,東京芝浦電気府中工場で1956年12月21日に竣工披露が行なわれています。一方ED45 21が日立製作所で1957年2月末に落成しています。これらED45 11121の3両は1961年にED91に改番されました。

機関車番号 製造年月日 製造所 主な仕様・履歴
改番後 製造時
ED90 1 ED44 1 1955/7/20 日立製作所 直接式,全長13,500mm,運転整備重量60.00t,低圧タップ14段切替制御,MT950形交流整流子電動機4基,歯車比1:5.81,吊り掛け式,1時間定格出力1,120kW,最高速度65km/h,1959年弱め界磁制御追加,1966年廃車
ED91 1 ED45 1 1955/9/28 三菱電機・
新三菱重工
整流器式,全長14,200mm,運転整備重量59.90t,水冷イグナイトロン水銀整流器,低圧タップ17段/格子位相24段/弱め界磁5段切替制御,MT903形直流直巻電動機4基,歯車比1:5.69,クイル式,1時間定格出力1,000kW,最高速度85km/h,1959年シリコン整流器に交換,1970年廃車
ED91 11 ED45 11 1956/12/21 東京芝浦電気 整流器式,全長13,200mm,運転整備重量60.00t,風冷イグナイトロン水銀整流器,低圧タップ15段/抵抗15段/弱め界磁2段切替制御,MT902A形直流直巻電動機4基,歯車比1:4.31,吊り掛け式,1時間定格出力1,100kW,最高速度100km/h,1970年廃車,1975年から森郷児童遊園で静態保存,2022年解体
ED91 21 ED45 21 1957/2/末 日立製作所 整流器式,全長13,800mm,運転整備重量60.00t,風冷エキサイトロン水銀整流器,高圧タップ32段/弱め界磁3段切替制御,MT904形直流直巻電動機4基,歯車比1:5.47,クイル式,1時間定格出力1,640kW,最高速度100km/h,1959年シリコン整流器に交換,1時間定格出力1,500kWに変更,1970年廃車,新幹線総合車両センターで静態保存,2019年12月解体

ED91 11
No.D70s_050730-239
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
東芝製ED91 11(元EDE45 11)の2END側。仙台総合車両センターを訪問した際,ボランティアの方から利府駅近くの公園に保存機があると伺い会いに行きました。保存状態が良くて感動・感激しました。
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-241
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
2END側から非公式側をみた形式写真,赤地に黄帯,黒の車体。
(2005/09/04追加 2023/02/21ワイド化)
No.D70s_050730-244
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
東芝のマークの入ったパンタグラフと助士席側窓,デッキ
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-245
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
公式側面のナンバープレートと東芝の切り抜き文字
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-248
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園


1END側。スノープラウをつけた堂々たる姿
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-261
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
こちらが1END側。水銀整流器に風冷式のイグナイトロンを使用し,低圧側のタップ切換えを無電弧で行うなど東芝の技術を盛り込んだ意欲的な試作機です。
(2005/09/04追加 2023/02/21ワイド化)
No.D70s_050730-262
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
非公式側面
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-273
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園

堂々たる風格があります。行ってみてわかったのですが,森郷児童遊園は利府支線の延長上にあり,この先にも廃線跡らしき雰囲気を感じました。利府-愛宕間の廃線跡に位置しているようです。公園内はちり1つ落ちておらず,機関車も美しく整備されていて地元の皆さんの文化財保護に対する熱意に頭が下がります。
(2005/09/04)
No.D70s_050730-275
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
1END側のナンバープレート
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-276
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
DT110形台車の板ばね
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-278
2005年7月30日
ED91 11
森郷児童遊園
1ENDデッキ上部。地域で大切に保存されていたED91 11でしたが,PCBの問題があり残念ながら2022年に解体されてしまいました。
(2023/02/21追加)
ED91 21
No.D70s_050730-63
2005年7月30日
ED91 21
仙台総合車両センター
ナンバープレートが無いのでカマ番がわかりませんが,日立製のED91 21(元ED45 21)です。黄色のテープは致し方なし。
(2005/09/04追加 2023/02/21ワイド化)
No.D70s_050730-53
2005年7月30日
ED91 21
仙台総合車両センター
日立マークの付いたパンタグラフとDT111形台車。動力伝達方式はクイル式。
(2023/02/21追加)
No.D70s_050730-55
2005年7月30日
ED91 21
仙台総合車両センター
ED91 11と比べるとデッキの手すりが異なります。この機関車も残念ながら2019年に解体されてしまいました。
(2005/09/04追加 2023/02/21ワイド化)

 2005年9月4日   ページ新設
 2009年7月19日  内容更新
 2023年2月21日  形式一覧表を追加
 2023年2月21日  写真ワイド化完了
 2023年2月21日  キャプション欄左右入替完了
 2023年2月21日  写真9枚追加


■ 参考文献
 藤本勝久 交流・交直流電機出生の記録[1]  鉄道ファン311 1987年 3月号 交友社


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